日本映画への出演がつづく韓国の国民的女優──シム・ウンギョンが演じる理由

今年6月に公開された『新聞記者』で政治権力の悪を暴こうとする日本の若き新聞記者を演じ話題となった韓国女優、シム・ウンギョン。10月11日公開の新作『ブルーアワーにぶっ飛ばす』で再び日本語での演技に挑んだ。

「いいっすね〜」「あざっす」「ぱね〜」─シム・ウンギョンが『ブルーアワーにぶっ飛ばす』で演じる清浦は、そんな若者言葉を連発する奔放で快活な女性だ。共演の夏帆が演じるのは、仕事も恋愛もどこかパッとしない30歳のCMディレクターの砂田。清浦はその秘密の友人という設定である。

「清浦は人を笑わせたり、冗談を言ったりするとても明るい性格の持ち主です。そこは私と似てますね。だけど最初に脚本を読んだとき、意味がわからない言葉ばかりだったので不安でした。今は癖になって『あ、そっすね〜』と自然に出てしまいますけど(笑)」

物語はふたりが砂田の両親のいる田舎に行くところから始まる。都会暮らしが長くなった砂田にとって、久々に帰る田舎での人間関係は面倒くさいことばかり。しかし、その様子をどこか楽しそうに見ている清浦といるうちに、砂田の固かった心の殻が徐々に剥がれ落ちていく。

「これは現代を生きる女性たちの物語です。これまで女性の監督と仕事をしたことはありませんでしたが、女性監督が脚本を書き、女性を主人公にした素敵な映画であることに惹かれました」

流暢な日本語で語ったウンギョンは、韓国では子役として小さい時から活躍してきた、知らない人はいないというほどの有名女優だ。あえて日本で活動をする理由は何なのか。

「俳優としていろんな経験をすることは大事なことです。もちろん韓国の仕事も大切ですが、他の場所でチャンスをもらって経験を重ねることが、演技の幅を広げると思います。芝居って難しいことばかりだけど、いまでも続けていられるのは、役に入り込んで夢中になるとカタルシスがあるから。この仕事をやってよかったと思える瞬間です」

純粋に芝居を愛するからこそ、シム・ウンギョンは言葉や文化の違いをスイスイと乗り越えてしまう。そうして彼女は、日本と韓国とのあいだにかかる橋を1本増やした。映画と役者は虹の架け橋でもある。

シム・ウンギョン

1994年5月31日生まれ。9歳でドラマデビュー。韓国で観客動員740万人を記録した『サニー 永遠の仲間たち』(2011)に出演、主役を演じた『怪しい彼女』(2014)は865万人を記録。名実ともに国民的女優になった。その後も韓国ドラマ『のだめカンタービレ~ネイルカンタービレ』(2014)に出演。現在は日本と韓国を行き来して活動している。

『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

30歳のCMディレクターの砂田(夏帆)はある日、病気の祖母を見舞うために嫌いな故郷に帰ることになる。ついて来たのは、砂田が困った時には必ず現れる、自由で天真爛漫な秘密の友人、清浦(シム・ウンギョン)。10月11日より全国公開。(2019.10.30 for GQ Japan)